花粉症とは

花粉が原因で発現する、くしゃみ、鼻汁、および眼の瘙痒(そうよう)を主訴とする症状は、「花粉症」と呼称されます。花粉症は、生体の免疫応答が過剰に作用することにより引き起こされるアレルギー性疾患であります。本稿では、その病因から予防法、そして治療法に至るまで、平易に解説を加えます。

原因

人体には、本来、細菌やウイルスなどの異物を排除するための免疫機構が備わっております。しかしながら、この免疫応答が過剰に発動した場合、アレルギー症状を誘発いたします。花粉は、本来生体に対して無害な物質でありますが、鼻腔や眼から体内に侵入すると、免疫システムがこれを異物として認識し、過敏に反応を示すこととなります。

体は花粉を攻撃するために IgE抗体 を作り、この抗体がアレルギー反応を起こす 肥満細胞(マスト細胞) に結合。すると、ヒスタミンやロイコトリエンなどの物質が放出され、鼻水・くしゃみ・かゆみ・鼻づまりなどの症状が現れます。

  • ヒスタミン:くしゃみ、鼻水、かゆみを引き起こす
  • ロイコトリエン:鼻の粘膜が腫れ、鼻づまりの原因に

発症のしくみ

花粉症は、体の「許容量」によって発症すると考えられています。これまで花粉症がなかった方でも、突然症状が出ることがあります。体内の許容量が限界を超えると、花粉に反応して花粉症が発症します。

そのため、症状が出ていない段階でも マスクや花粉防止メガネ を使って花粉の侵入を減らすことが、発症予防につながります。

主な症状

人によって症状の現れ方は異なりますが、代表的なものは次の通りです。

  • くしゃみ、鼻水、鼻づまり
  • 目のかゆみ、充血、涙
  • 体のかゆみ、頭痛
  • 口呼吸によるのどの痛みや風邪にかかりやすくなること
  • 酸素の取り込みが悪くなり、日中の眠気の原因にも

花粉症の時期

一般的には 2~3月のスギ花粉 がピークですが、花粉は1年を通して飛散しています。

  • 3~4月:ヒノキ
  • 5月前半~6月:イネ科
  • 8月中旬~9月下旬:ブタクサ

そのため、春以外にも鼻や目の症状が出る場合は、スギ以外の花粉が原因の可能性があります。

放置するとどうなる?

花粉症は、自然治癒に至る事例が少なく、普通感冒(風邪)のように休養のみで症状が改善することはありません。症状が続くと、感情の不安定化や集中力の低下、睡眠不足などを招き、結果として生活の質(QOL)に悪影響を及ぼします。

また、症状の重さは体調だけでなく、その年の 花粉の飛散量 にも左右されます。

検査方法

  • 症状や鼻・目の状態の確認
  • 血液検査:IgE抗体や好酸球のチェック
  • 皮膚反応テスト:アレルゲンの反応を見る検査

治療方法

症状に応じて、以下の薬や治療を組み合わせます。

  • 抗ヒスタミン薬
    くしゃみ・鼻水・目のかゆみに効果。第一~第三世代まであり、眠気の有無や即効性で使い分けます。
  • 抗アレルギー薬(抗ロイコトリエン薬など)
    鼻づまりやアレルギー反応全体を抑える薬。
  • アレルゲン免疫療法(減感作療法)
    スギ花粉症の方が対象。舌の下や皮下注射で少量ずつアレルゲンを体に慣れさせ、症状を軽くしたり薬の量を減らしたりする治療。3年以上継続し、約80%に効果が期待されます。

注意点

花粉症の症状は花粉だけでなく、ハウスダストやペットの毛などでも起こることがあります。症状の原因を特定することが、適切な治療につながります。

予防方法

  • 外出時は マスク、帽子、花粉用メガネ を使用
  • 帰宅時は服についた花粉を落とし、手洗い・うがい・洗顔・目の洗浄
  • 室内の掃除をこまめに行い、花粉やハウスダストを除去
  • 花粉シーズンは 窓を閉める、布団の天日干しを避ける
  • 空気清浄機 の活用で室内環境を整える
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