男性更年期障害(LOH症候群)とは
男性更年期障害は、LOH症候群(Late-Onset Hypogonadism)と称される疾患であり、女性の更年期障害に類似した症状が発現することがあります。発現する症状は多岐にわたり、主要なものとして、不安、倦怠感、不眠、記憶力および意欲の低下、集中力の散漫(または「集中力の低下」)、頭痛、発汗などが列挙されます。しかしながら、これらの全症状が同時に出現するわけではありません。
日常生活において「疲労感が持続する」「抑うつ傾向にある」などと認識されることもあり、男性更年期障害は自覚が困難な場合があります。軽微な症状と看過し放置することで、症状が重篤化する可能性や、性機能障害、あるいは他の合併症のリスクが増大することも懸念されます。つきましては、何らかの症状に懸念を抱かれる場合は、速やかに医療機関を受診し、ご相談いただくことが肝要です。
原因
男性更年期障害の主要因は、男性ホルモン(テストステロン)の分泌量の低下、並びに、自律神経の機能不全にあります。
これらを増悪させる要因として、精神的ストレスおよび不適切な生活習慣が挙げられます。結果として生じるホルモン分泌量の減少や自律神経の失調が、諸症状を誘発する機序と考えられます。
男性ホルモンの減少
男性ホルモンは40歳代以降から減少傾向が確認されており、加齢のみならず、食生活、睡眠不足、運動不足といった生活習慣も影響を及ぼします。
近年においては若年層での発症事例も散見されるため、年齢層を問わず、注意が必要です。ただし、男性ホルモンの減少が確認された場合でも、必ずしもそれに起因する症状が発現するわけではありません。
自律神経の乱れ
男性ホルモンの分泌量の低下、あるいは不規則な生活に起因する自律神経系の平衡の失調は、倦怠感、集中力の低下などの精神神経症状を誘発いたします。これらの症状群も、男性更年期障害の特徴として認識されています。
主な症状
男性更年期障害の症状は大きく「身体的症状」「精神症状」「性機能障害」の3つに分けられます。
身体的症状
- 疲れやすさ・倦怠感
- 筋肉・関節の痛み
- 発汗や動悸
- 筋力低下、体重変化、内臓脂肪増加、骨量減少
- 皮膚や体毛の変化
これらの症状が生活習慣病や高血圧、骨粗鬆症などのリスクにつながる場合もあります。
精神症状
- イライラしやすい
- 不安や落ち込み
- 集中力の低下
- 不眠
日常生活でも現れる症状のため、自覚しにくく、放置してしまうこともあります。
性機能障害
- 勃起不全
- 性欲減退
- 頻尿
男性ホルモンの減少が性機能に影響するため、症状に気付きにくい場合があります。
検査・診断
男性更年期障害は、問診と血液検査で診断します。
問診で症状を確認し、血液検査で男性ホルモンの量を測定します。必要に応じて、脂質や糖代謝、肝臓・腎臓機能などを確認し、総合的に判断します。
治療法
男性更年期障害は治療により改善が期待できる病気です。主な治療法は以下の4つです。
生活療法
運動療法および食生活の是正を介して、男性ホルモンならびに成長ホルモンの分泌促進を図ります。
具体的には筋力トレーニングを導入する事例が多々あり、運動が不慣れな方に対しても、負担を最小限に抑えた実行可能なメニューが提案されます。
漢方薬
補中益気湯、八味地黄丸、十全大補湯、芍薬甘草湯、葛根湯など、テストステロンの増加が期待できる漢方を用います。長期的に体質改善を目指す治療法です。
男性ホルモン補充療法
不足した男性ホルモンを補充することで、症状の改善を目指します。定期的な注射と血液検査で安全性と効果を確認します。前立腺がんや多血症などの既往がある場合は受けられないことがあります。
プラセンタ注射
ホルモン補充により症状の改善を目指します。女性の更年期障害では保険適応ですが、男性の場合は自費治療になります。
治療・生活の注意点
個人差を理解する
症状や治療効果には個人差があります。他人と比較せず、自分のペースで治療に取り組むことが大切です。
長期的な視点で取り組む
治療は短期間で改善するものではなく、長期的な視点で継続することが重要です。
小さな変化も相談する
男性更年期障害の症状は他の病気と似る場合があります。些細な症状でも医師に相談し、正確な状況を把握することが大切です。