脂質異常症とは
脂質異常症は、血中における脂質構成要素の均衡が逸脱した病態を指します。
具体的には、低比重リポ蛋白(LDL)コレステロールの過多、高比重リポ蛋白(HDL)コレステロールの過少、または中性脂肪の過剰が認められる場合に該当いたします。
血液中にはコレステロール、中性脂肪、リン脂質、遊離脂肪酸の四種類の脂質が含まれております。
このうちコレステロールは、消化に不可欠な胆汁酸、細胞膜、各種ホルモン類の主要な構成材料となるなど、生体において重要な機能を担っております。
脂質異常症は生活習慣病の一つに分類されますが、自覚症状が極めて乏しいため、体調に異変を認め医療機関を受診した際に初めて判明する事例も少なくありません。
原因e
脂質異常症の原因は、大きく分けて3つです。
生活習慣
食べ過ぎや偏った食事内容、運動不足、睡眠不足、および過度な精神的ストレスなどが、本疾患の発症要因となります。
特に食生活が与える影響は甚大であり、脂質やカロリー含有量の高い欧米型の食事が一般化したことも、脂質異常症の増加に深く関与していると認識されます。
体質(遺伝)
血縁者に脂質異常症の既往歴が確認される場合、生活習慣の要因とは独立して本疾患を発症することがございます。
遺伝的素因により、血中脂質のバランスが崩れやすい体質が存在することも確認されております。
病気・薬の影響
ステロイドホルモン剤や経口避妊薬など、一部の医薬品が脂質の均衡に影響を及ぼすことがございます。
また、他の基礎疾患に対する治療経過中に、脂質異常症が二次的に発現する事例も存在します。
症状
脂質異常症は、大部分の症例において自覚症状を伴いません。
皮膚に黄色の結節(黄色腫)が出現する事例もございますが、これを以て診断を下すことは困難です。
本疾患の最大の懸念事項は、症状がないまま動脈硬化が進行し、将来的に脳梗塞や心筋梗塞などの重篤な合併症を招来する点にあります。
健康維持のためには、早期の検査および治療介入が不可欠であります。
検査・診断
脂質異常症の診断は、血液検査によって確定いたします。
自覚症状を伴わない事例が多いため、健康診断や他の疾患の検査において偶発的に発見されることが一般的であります。
正確な診断を下すためには、空腹時採血の実施が必要とされます。
通常、検査前10時間程度は、食事を摂取しないことが強く推奨されます。
治療
脂質異常症の治療は、生活習慣の改善と薬物療法の併用です。
- 生活習慣改善:栄養バランスのとれた食事、適度な運動、十分な睡眠などを心がけます。
- 薬物療法:生活習慣の改善だけでは効果が不十分な場合、スタチン系の薬やLDLコアフェレーシスなどで脂質を下げます。
生活習慣が原因の場合、食事と運動だけで改善することも多くあります。
注意点
脂質異常症は症状が発現しにくいため、治療の遅延が生じやすい点が注意すべき事項であります。健康診断において異常が指摘されたとしても、自覚症状を伴わない場合は「経過観察で対処可能である」と判断されがちですが、放置することにより病態は容易に悪化する傾向にあります。
早期に医療機関に相談し、軽度のうちに治療を始めることが、改善の近道です。
予防
脂質異常症の予防は、生活習慣改善が基本です。
- 食事:栄養バランスを意識し、糖質やアルコールを控えめに。
- 運動:週3~4日、30分前後の有酸素運動を継続することが効果的です。
ポイントは無理なく継続すること。1日だけ頑張っても効果は限定的です。
放置リスク
脂質異常症を放置した結果、動脈硬化が進行し、血管の硬化および内腔の狭窄(きょうさく)が生じ、血管内にプラークが蓄積いたします。
この病態の進行により、心筋梗塞、脳梗塞、認知症を発症するリスクが亢進し、結果として健康寿命が損なわれることとなります。
健康診断において偶発的に異常が発見された場合は、「面倒である」と見なすのではなく、好機として捉えるべきです。
早期に治療を開始することにより、将来的に発生し得るリスクを大幅に低減することが可能です。