血圧とは
心臓がポンプのように血液を押し出し、全身をめぐって戻ってくるとき、血管の内側には圧力がかかります。これが「血圧」です。
血圧には、次の2つがあります。
- 収縮期血圧(上)…心臓が縮んで血液を送り出すときの圧力
- 拡張期血圧(下)…心臓が広がって血液を取り込むときの圧力
どちらも、カラダの状態を知る重要な指標です。
高血圧とは
診察室で測る血圧が 140/90mmHg以上、または自宅で測る血圧が 135/85mmHg以上 のどちらかに該当すると「高血圧」とされます。
血圧は一度の測定だけで判断はできません。
何度か測定しても基準を上回る場合に、はじめて高血圧と診断されます。
高血圧の原因
高血圧は、遺伝と生活習慣が影響し合って起こると考えられています。
- 家族に高血圧の人がいても、必ず自分もなるとは限らない
- 逆に、家族歴がなくても高血圧になることは珍しくない
重要なのは、「遺伝だから仕方ない」と諦めないこと。
生活習慣を整えることで予防・改善が期待できます。
二次性高血圧
はっきりとした原因となる病気があり、その影響で血圧が上がる場合を「二次性高血圧」といいます。代表的なものは次の通りです。
原発性アルドステロン症
副腎からのホルモン(アルドステロン)が過剰に分泌されることにより発症いたします。
本病態を放置した場合、心不全および脳卒中を発症するリスクが亢進いたします。
腎血管性高血圧
腎臓へ血液を供給する動脈が狭窄することにより、腎臓側が血液灌流(かんりゅう)の不足と認識し、ホルモン(レニン)が分泌されます。
この結果として、血圧が上昇する機序であります。
その他の原因
クッシング症候群、褐色細胞腫、甲状腺疾患、副甲状腺機能亢進症、末端肥大症、脳血管障害、脳腫瘍、糖尿病性腎症なども、高血圧の発症要因となることがございます。
女性にみられる高血圧
女性には、ライフステージと関係した高血圧があります。
妊娠高血圧症候群
妊婦の約1割に発現すると推定されており、放置した場合には、母体のみならず胎児に対しても影響を及ぼす可能性がございます。
更年期の血圧変化
ホルモンバランスの変動により、更年期において血圧が上昇する傾向を示す方も少なくありません。
高血圧の症状
高血圧の多くは自覚症状がありません。
「困っていないから大丈夫」と放置すると、動脈硬化が進み、
- 脳(脳卒中)
- 心臓(心筋梗塞・心不全)
- 腎臓(腎不全)
- 四肢の血管
などに重大な障害を引き起こすことがあります。
気づかないうちに進行するため、早めの対策が重要です。
正しい血圧の測り方
血圧は測る部位や環境で変わります。家庭での測定を習慣にしましょう。
測定のタイミング
- 朝食前(起床後1時間以内、排尿後)
- 就寝前
測り方のポイント
- 椅子に座り、1〜2分落ち着いてから測定を開始
- 測定器は心臓と同じ高さに
- 薄手の衣類1枚の上から測る
- 1〜3回測定し、その平均値を記録する
治療法方
生活習慣の見直し
高血圧の原因は、遺伝的なものと生活習慣によるものです。生活習慣の改善は高血圧治療の基本となります。
減塩(男性7.5g/日以下、女性6.5g/日以下)、野菜や果物の積極的な摂取、魚中心の食事、BMI<25、定期的な有酸素運動、適度なアルコール、禁煙を目標としましょう。
薬物治療
生活習慣を改善しても血圧が下がらない場合、降圧薬と呼ばれる血圧を下げる飲み薬を使います。
血圧を下げる効果のある降圧薬ですが、薬の種類により血圧の下げ方が異なります。
1種類あるいは複数の降圧薬を使って目標血圧まで血圧を下げます。
飲み合わせにより薬の効き目が弱くなったり効き目が強くなりすぎて身体に悪影響を及ぼす場合があるのでお薬手帳や他の薬のメモを担当医にお見せください。
治療法方
高血圧の治療は、決して即時性のあるものではありません。
先にお伝えした治療は、いずれも継続性を求められるものです。
特に、生活習慣に関しては毎日継続することが大切です。
1日だけ無理をして頑張るものではなく、継続してこそになりますので、無理せずに続けられるよう努めることが大切です。
運動療法、食事療法いずれも同様で、1日だけ治療に取り組むのではなく、継続して取り組むことで、血圧への効果が期待できます。
また、これらは高血圧の治療はもちろんですが、予防法としても適しています。
注意点
高血圧の治療には、即効性は期待できません。先述の治療法は、すべて継続的な取り組みが必要となります。特に生活習慣の改善については、日々の積み重ねが重要です。一日限りの無理な努力ではなく、長期的に続けることで効果が現れますので、無理のない範囲で継続できるよう心がけることが求められます。運動療法、食事療法についても同じで、単発的な実践ではなく、継続的に取り組むことによって、血圧への良い影響が見込まれます。なお、これらの取り組みは高血圧の治療だけでなく、予防策としても有効です。
予防
生活習慣指導は高血圧の治療に加え、予防策としても有効です。先にお話しした通り、予防においても継続が鍵となります。一日だけ実践しても予防には不十分で、毎日続けることで初めて予防効果が得られますので、食事にしても運動にしても、継続可能なメニューの設定が大切です。無理なく続けることにより、予防効果が高まります。また、ストレスは避けなければなりません。ストレスを溜め込むと、血圧の上昇を引き起こします。疲労を感じた際には無理せず休むこと、ストレスが溜まりそうな場合には適度に解消することも、高血圧予防の方法の一つです。
高血圧の放置リスク
高血圧を放置すると、動脈が硬化することで動脈硬化のリスクが増大します。その結果、脳出血や脳梗塞などの脳への障害、狭心症や心筋梗塞などの心臓への障害、さらには腎不全や大動脈解離の危険性も上昇します。その他にも、くも膜下出血や眼底網膜病変、閉塞性動脈硬化症、大動脈瘤、大動脈瘤破裂といった疾患の可能性も考えられます。また、血圧が高いほど、脳心血管疾患による死亡率が上昇することが知られています。